身土不二

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ペットボトル茶と急須茶(その3) 深蒸し茶に戸惑う

 日本茶に関しては、浦島太郎になった気分でした。深蒸し茶は、まず色が妙に緑が強いのです。これは緑茶というからにはグリーンを出そうということだったのかもしれません。本来の昔からの高級煎茶は、もっと黄色い色だったと憶えています。

急須の茶漉し

 そして、私が一番違和感をおぼえるのは、お茶屋さんで高級煎茶を購入したとき(ほとんどの店で深蒸し茶しかない)、これにふさわしい急須はどれですか?と質問すると、アミ急須(茶漉しが陶茶漉しでなく、金網のもの)を奨めてくれるのです。常滑焼の高級急須は陶茶漉しのものです。高級煎茶を買ったにもかかわらず、急須は中級品以下なのです。このお茶屋さんは、正直で誠実なのです。深蒸し茶は、茶葉が細かいため、高級急須の陶茶漉しでは目詰まりしてしまうから、奨められないのです。元急須の卸商の息子として、これはどうにもやりきれないことです。伝統の技を継承してきた陶工たちの戸惑いを想うととても残念です。(もっとも陶茶漉しでも「細目ささめ」という深蒸しにも使える急須も一部でてきましたが・・・)

 もう一つ、深蒸し茶で気になるのは、湯飲みの底にのこるドロリ感です。あれはどうにも気になります。お米にこだわるお客様とお茶談義になると同様の感覚をもっている方がいるので、やはり私だけの思い込みではないのだと意を強くし、同志を得た気分になります。その方たちも口を揃えて、街中で探しても昔の高級煎茶を置いている店が少ないと嘆いています。

 ここで深蒸し茶のことについてふれたのは、スーパーや一部の小売店ですが「深蒸し」という用語に高級感を重ねて使用しているケースがあるので、それは、ちょっと違うのでないかという気がしていたからです。

 お茶の味は多少分かっても、お茶の製法の細部についてはくわしくありませんので、ここではふれません。ただ茶問屋さんから、「お茶はブレンドの技で味と香りを出してきたのです」「今のお茶は火入れによって香りを出している。標高の高い地域で栽培される山茶の香りとは違うのです。」という話は聞いたことがあります。また、静岡の手揉み茶保存会の人から、お茶のソムリエのような人にとっては、「金網茶漉し急須の金属臭は気になります」「水道水のカルキ臭も問題です」という話も聞いたこともあります。

日本茶はスローフードへの身近な入口

 ただ、お茶は嗜好品ですから、深蒸し茶の色や味や香り、便利さの方を好む人も多いと思います。それは、多様性の中の選択の一つということでいいのです。

 私は急須への想いもあって、湯冷ましをして、ひと昔前の製法の煎茶の味わいを愉しんでいきたいと望んでいます。良い茶葉も熱湯を注いでしまっては台無しです。まどろっこしくても、湯冷ましをしてから、急須に湯を注ぐという『待つゆとり』のある飲茶を日本型スローフードの最も身近な入口として位置づけていってみようと思っています。

 「ペットボトル茶」を通して若い人たちが、日本茶に親近感を深めたのはとてもいいことだと思います。あともう一歩踏み込んで、スローフードの日本茶の飲茶をたしなむのがオシャレだという気風が広がってくれれば最高です。急須や湯冷ましや湯呑みにも凝って愉しむようになれば、万歳です!

2001年03月12日(月)

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