TV番組紹介 対談:農民作家 山下惣一vs熊本大学教授 徳野貞雄(農村社会学)

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 農民のくらしの目線から、30年間にわたって人々に呼びかけを続けてきた農民作家山下惣一氏、著書の中には我がHPのタイトルと同じ「身土不二の探究」もある。もう一人が農村社会学者徳野貞雄氏。独自の視点で、研究室に閉じこもらず、足で書き、口で組織を創り出してしまうタイプの彼は東京で学会があったとき、私の店に立ち寄ってくれた人である。彼とは全国合鴨フォーラムに私が参加するようになって面識があるのだ。この二人が対談を行うというのだから、見逃せない。早速、NHK3チャンネルの録画予約を入れた。期待通りで、是非一人でも多くの人に知ってほしいと思った内容だった。一部ですが、VTRからテープ起こしをして、活字にしますので、読んでみてください。

番組の紹介

ナレーション

 私たちがふだん何気なく口に運んでいる食物。しかし今、日本人の食卓を支えてきた農村で多くの問題が持ち上がっています。去年、国内で初めてBSEいわゆる狂牛病に感染した牛が見つかりました。汚染されたエサの原料が海外から紛れ込んだことが原因ではないかと考えられます。消費者の間には、牛肉の安全性に対する不安が広がりました。国内の畜産農家は、いまだにその打撃から立ち直っていません。

 グローバル化の中、安い食材を求めて野菜などの生産地を海外に移転する動きも加速しています。ネギ(長葱)の輸入量は、ここ5年で25倍にも膨れ上がりました。価格競争では太刀打ちできない日本のネギ農家の所得はこの間に半分にまで落ち込んでいます。私たちの食卓を支えてきた農村は、これからどうなっていくのでしょうか?

【身近な消費者を探せ】

 玄海灘に面する佐賀県唐津市湊町、海と山に挟まれた土地におよそ700世帯が暮らす半農半漁の町です。人々は山間の狭い土地に田畑を切り拓き、暮らしを立ててきました。戦後日本の農業が目標とした大規模化からは取り残された地域です。

 湊町で、40年にわたって農業を続けてきた農民作家、山下惣一さん。1. 5haの土地で、米・みかんなどを夫婦二人で作ってきました。みかん畑は結婚してすぐ自分たちの手で開墾しました。しかし、消費者の好みは大きく変わりました。夢を抱いて始めたみかんも今は値段の暴落が起こっています。農業収入だけで生活していくことは次第に難しくなっています。山下さんは、自ら農業に携わってきた経験を元に小説や評論を書いてきました。変貌していく農村の姿を都会の消費者に伝えようと筆を執ってきた30年、しかし現 場からの問いかけは、消費者に届いていないのではないかと感じてきました。

山下惣一・談

 「農業問題・食糧問題というのは、一体誰にとっての問題かということなんですよね。一般に、農家の問題だと思われているんだけど、そんなことはないわけです。私自身はどんな時代が来ても、私と私の家族の食べる分だけは作りつづけるわけですから、食糧問題・農業問題は消費者の問題だと30年言ってきた。ここにきて、やっぱりそうかなあいうことが、少しはわかってもらえる状況になったかなあという気はしていますよ。」

 農民作家としての山下さんの発言に注目してきた人がいます。社会学者の徳野貞雄さんです。今の食にまつわる問題を解決するには消費者にこそ注目するべきだと徳野さんも考えているからです。

徳野氏:談

 「今現在も、農村人口は2割、都市人口が8割、まあいいかえれば8割が消費者なんですね。一番大切なのは、消費者がどう行動するかが大切です。消費者というのは、どういう性格をしていてどういう人々なのか。ただ、単に人間とか顧客とかいう捉え方でなくて、人間としてどういう風にとらえていかなければいけないのか。それがそのまま、21世紀の社会や地球のあり方を決めていくだろうと思います。」

対話1 いま消費者に注目せよ

山下:(私は)日本人がこれだけ高学歴・情報化社会の中で、自分の食べるものがどうやって育っているかについて恐ろしく無知になったということを30年いっている。結局、消費者の無知がものをゆがめるのであって、(そういうことを言ったため)随分私も批判されてきましたけどね、今になって勉強しなきゃ自分の命も守れない時代になったんですよね。

徳野:今、若い学生なんか、コンビニの向こうに食べ物がいくらでもあると思っているんですよね。だから、食べ物がどうしてコンビニのところにきているのか、それがバックに国際的状況とか国内的農業状況とかがどうなっているのか、いっさい知らない。

山下:これは私のところのミカンですが、昔ワックスミカンというのがね、厚化粧して出していたでしょ。ああすると高く売れると。あれねえ、ゴロゴロころがしながらワックスかけるもんですから、もうミカンが変質して、東京まで送るとブカブカになるんですよ。それを消費者が食わなくなると無くなるわけですからね。だから、消費者がやっぱりしっかりしてもらわないと生産はしっかりしないなということですよ。それを農業からの情報が少ない少ないといわれるけど、出したって関心の無いところには届かないですよ。それだけ無関心なんだから。

徳野:無関心で、それから消費者はわがままですからね。前、調査したんですが、農業は自然の摂理に従うべきだ。85%だけどハウス栽培とか促成栽培でいつでも食べられるから便利になった。95%最後に、農産物に季節感が無くなったが、85%です。これが消費者というかニーズで、矛盾は平気でしますからね。

山下:我々が農業やってきた時代というのはね、ともかく消費者ニーズ、消費者ニーズに応えないと生きていけないとずっといわれてきました。ムカムカしていましたけどね。何も知らない消費者のニーズに応える必要があるか と。あるTV番組でそのこといったら、ある有名な評論家から叱られましたね。「あんたなんちゅうこと言うんだ。消費者というのは安くて良いものを選択すればよいのですよ。消費者から選択されるように努力するのは生産者の仕事でないか。そんなこと言っているから、日本の農業ダメになるんだ」といわれたんですよ。私はそうは思わなかった。でも、そのときは、返す言葉はなかったよ。だけど、そんなことじゃないと思っていた。今になってみれば、消費者が勉強しなかったら、自分の命を守れない時代になったわけですよ。

徳野:僕が思うのは、日本という国は面白い国で、農業はいろいろ分類している。畜産農家とか専業農家とか、でも消費者は全然分類していないのでいっぺん分類してみうと思って・・・<分類区分図のカードを示しながら> 農家から見た消費者の類型です。

農産物の価値がわかる↑

30%
「食」軽視型消費者層
啓蒙・教育
10%
期待される消費者層
親戚付合い
40%
市場対応型消費者層

20%
健康ブーム型消費者層
友達付合い

支払能力がある→

Aは、農産物の価値が、単に銭・価格だけでなく、環境とか暮らしとか、そういうものに とって(農業が)すごく重要なんだと分かる人。それに対してお金をちゃんと払ってくれる人。これは、期待される消費者ではないかと思うんです。これは10%位しかいない。
Bは、自分の健康とか家族の安全とか、そういうことに関心を持っている人。友達付合いをしてみようと(思える人)。
Cは、農産物に対して若干の関心はあるが、車とかに金はつかうが食べ物に対してお金をつかわない人。
Dは、一番、数が多いのは、安ければよい・どこのものでもよいという人達。ここにみんな、一番注目しているかも知れないが・・・なるべく、⇒こっち側(右へ)に移行してもらう対策をやっていかなければならない かなと。

山下:いつ頃から、生産者と消費者という対立概念のように言われるようになったのか?いつ頃から消費者なんて言う言葉がワーと広がったのか?それが、根本原因にあるような気がするんだよね。

徳野:やっぱりそれは日本の国が大きく変わったというか、高度経済成長期、1960年代までは、農村人口が8割だった、8割が農村に住んでいた。

山下:昭和30年代を調べたら、1800万世帯の内、600万だから、三戸に一軒が農家だった。

徳野:そのころ、農家でなくとも勤め人でも、家の裏が畑だった。だから8割住んでいた。商家でも、家で鶏を飼っていたりね、沢庵(タクワン)は買うものでなく、町の中でもほとんどが我が家で加工して、どこでも漬けていたでしょ。そうすると、皆、生産現場を少し知っていた。それが急激に都市部に流出した時に、変質してくる。

山下:それは、ムリもないと思う。ある会合で口蹄疫の話をした。去年は、狂牛病で騒いだがおととしは、口蹄疫で騒いだから。米の量と稲ワラと同じ量とれるんだから、日本でも900万トンとれているのに、中国から輸入している。経済効率が良いということで。これにウイルスがついていて、口蹄疫がおきたんです、という話をした。 そうしたら、大阪からやってきた20代のお姉さんから「稲ワラって何ですか?」と。今の都会の子に、そういうことを知れという方が無理なのでないかと思うという結論になったのよ。

徳野:そういう事実関係を生産者、農家側も出していなかったということもある。つい先だってある農協の青年部、熊本ですから畜産やっている所なんです、そこへ行った時、(狂牛病問題に)どう対応するかという話になったら、 「国とか代議士とか農水省にきちんと検査してもらうべきだ」ということと「行政の方に言って所得対応してもらう」と、この2つだけなんですね。消費者のところへ行って、説明せんのですか?と、うちの大学に来てもらえたら、学生は意外とわかりますよ。うちの大学は、赤牛を食べる運動やっているわけです。なぜ、赤牛食べねばいけないかというと、阿蘇の草地を守らねばいけないから。そういうことやっているから、そこに赤牛飼っている飼い 方とか説明したら、食べると思うんですね。そういう活動の方へはあまり頭がいかない。

山下:そりゃ、そうだろうね。

徳野:そのとき、僕が思ったのは、(生産農家は)今まで僕達にとっては当たり前だと思っていたことが当たり前じゃないんだと、真剣にそれに向かわないといけないんだ。お前ら、田んぼのことも知らない、糠(ヌカ)のことも知らない、籾(モミ)米のことも知らない、だからダメなんだと僕たち今まで言いすぎたんではないかと、やはりきちんと教えていくをやらなかったら(いけない)と。昔と違うんだと昔は瑞穂(ミズホ)の国だし、みんな、農家の子や孫ですからそんなこと知ってて当たり前と思いこんでいたんだけど、意外とそうじゃないんじゃないか、(生産農家は)きちんと教えていかねばならないんじゃないかと。

ナレーション

 消費者が生産の現場から離れてしまった今、食べ物は商品としての側面を強めています。常に安いものを求める消費者、それに応えようとする生産者は、激しい価格競争を勝ち残らねばならなくなったのです。そして今、生産地は次々と海外へ移っています。より安く生産することを追求した結果です。日本の食糧自給率は40%にまで落ち込んでいます。

スーパーの輸入野菜コーナー前でのインタビュー

消費者A「できれば国産の方がいいんですけども、やっぱりつい値段のことになるとそっちの方が優先することが多いですね。」

消費者B「本当は国産の方がやわらかいなと思って、なるべく国産のほうを買おうとしているんですけども、今日は値段につられて買っちゃいました。」

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対話の二人のやりとりから、私が共鳴したこと

 食糧問題・農業問題は、実は消費者の問題だったということがこの間の立て続けに起 きた事件で、ますます誰の目にも明らかになってきました。BSE国内発覚から始まり、雪印乳業、雪印食品、スターゼン、全農チキンフーズと事件は、牛乳・牛肉・豚肉・鶏肉と広がり、次々と発覚しました。特に、日本の農家・農協の元締めである全農の会社からの、自覚的な消費者を束ねている生協に対する出荷の品で、問題が発覚した点が極めて象徴的に事態の深刻さを物語っているといえます。

 判断の根拠をどこにおいて選択してきたかが、一人一人問われているのです。「消費者ニーズ」という言葉の空疎な響きを感じとれる生活者としての感性が必要とされているのです。山下さんも徳野さんもこの点を見事に喝破しています。それぞれの表現で「消費者」の危うさを鋭く指摘しています。それに引きかえ、マスコミは相変わらず、生産者よりの行政を消費者重視の行政へ転換しないと云々のような生産者と消費者の対立の図式で描こうとしています。そのとらえ方からは、出口は決して見えてこないにもかかわらずです。本当は「消費者ニーズ」という得体の知れない錦の御旗の下に「安さ」や「便利さ」という一面的な物差しをそれによって失うものを顧みることなく振り回してきた流通業者のゆがんだ競争にメスを入れなければならないのに・・・。

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